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開心術

皮膚を切開し
胸骨を割って
開胸器が差し込まれると

かすかな光沢を放つ心膜におごそかに包まれて
心臓がそこに在る

心膜を開けると
のびたり縮んだりなんていう言葉では表せない
複雑な動きをする心臓が
眠っている患者に
規則正しい命の脈動を送り続けている。

心臓外科医が
さまざまな管が心臓と血管に挿入し
この哀しいぐらいに忠実に動き続ける臓器の
代わりとなる機械につなぐ。

管を通してしだいに
命を支え続けてきた心臓の働きは
人工心肺に肩代わりされていく。

さあ、時が来た。

薬液が注入されると
心臓は見る間に
命の輝きに満ちた力強い動きを弱め
ひっそりと停止する。

次に動き出すその時には
壊れた弁は取り替えられ
詰まった血管はバイパスされ
新しいあなたになっているはず。

天寿が尽きるその時まで
使命を全うできるようにするために
今だけは、しばしの安らぎを。
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